「社会人博士に向いているのはどんな人?」
というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.
社会人博士について調べると,「研究が好きな人」「知的好奇心が強い人」「自己管理ができる人」みたいな話がよく出てきます.
もちろん全部あった方がいいです.でも僕は,僕が社会人博士に向いていると思うのは,
実績がある人です.
では蓋を開けてみよう.
社会人博士で一番重要なのは,すでに研究実績があること
僕が最初に見るのは,査読付き論文の実績です.特に主著でどれだけ論文誌へ出しているかを見ます.
目安としては,志望する大学・研究科の修了要件として求められる論文数と同じくらいの実績がすでにあるのが最低ライン.理想を言えば,その倍くらいの主著論文を持っている状態です.
もちろん,これは大学の入学要件でも修了要件でもありません.完全に僕個人の「社会人博士へ行っていいか」の判定基準です.大学や研究科によって要件はかなり違いますし,入学後の研究成果が必要になるケースもあります.
だから単純に「修了要件をもう満たしているか」だけを見るわけでもありません.修了要件としてそのまま使えるかどうかとは別に,博士に値するだけの研究成果をすでに出せているかを見る,という感じです.
僕自身は材料系の研究テーマを扱っていましたが,分野が違ってもここはあまり変わらないと思っています.
社会人博士に入ってから研究者としてゼロから育つのではなく,すでに研究ができる人が博士号という形にまとめに行く.
僕は社会人博士を,かなりそういうものとして見ています.
学会発表が多いだけでは,僕ならまだ行かない
学会発表を何度もしているけど,査読付き論文はほとんどない.
僕なら,その状態ではまだ社会人博士へ行きません.まず仕事の中で論文を出します.
なぜかというと,査読付き論文を一本通す過程は,博士論文の審査とかなり共通する部分があるからです.自分では完璧だと思った内容に他人から突っ込まれ,根拠を追加し,文章を直し,反論し,また直す.
そして最後に第三者から「これなら研究成果として出していい」と評価される.
この経験がないまま,仕事をしながら博士論文まで一気にやるのはかなり厳しいと思います.
「研究テーマには自信があります」
という話も,僕はあまり評価しません.本当に強い研究テーマで,自分にそれを研究成果へ変える力があるなら,まず査読付き論文として出してみればいいからです.
研究実績は自己評価ではなく,他者評価です.
ここはかなり重要だと思っています.
次に重要なのは,指導教員との関係です
実績の次に見るなら,指導教員との関係です.
僕は,尊敬できて,人としても好きな先生のところへ行った方がいいと思います.社会人博士は仕事と研究を並行するので,ただでさえ余裕がありません.そこに「この先生と話すの苦痛だな」が追加されたら,かなり地獄です.
ただ,自分が先生を好きなだけでも足りません.
相手からも「この人なら博士を取れる」と思われている必要があります.
博士を取りたいと相談するときは,遠回しに雰囲気を探るより,「自分は博士を取れると思いますか」と聞いてしまえばいいと思います.短期間での修了を考えているなら,それが現実的かも含めて聞けばいい.
そこで指導教員から「まだ難しい」と言われるなら,僕ならいったん博士課程には入りません.
落ち込む話でもないです.
まず研究実績を作ればいいだけです.
時間と家族の話をまとめられないなら,まだ始めない方がいい
社会人博士は研究力だけでは終わりません.物理的な拘束時間があります.
学会発表,大学での打ち合わせ,研究のための作業など,本業とぶつかる時間が普通に出てきます.会社が業務として認めてくれるならいいですが,そうでなければ有給休暇を使う必要もあります.
だから出願前に一度,必要な時間をかなり具体的にシミュレーションした方がいいです.
仕事が忙しい人と,ほとんど残業がない人では難易度がまるで違います.仕事が猛烈に忙しいなら,当然かなりの体力とメンタルが必要です.逆に仕事に余裕があり,研究へ時間を回せるなら,同じ社会人博士でも負荷はかなり変わります.
そして家庭があるなら,家族との話も避けられません.
家族が最初から大賛成である必要まではないと思います.ただ,「よく分からないけど始めちゃいました」はおすすめしません.どうせ後から研究時間や休日の使い方で向き合うことになるからです.
先送りしても消えません.
前の記事でも書きましたが,社会人博士は普通にきついです.
「研究が好きな人が向いている」は,たぶん順番が逆です
社会人博士に向いている人を調べると,「研究が好き」「知的好奇心が強い」という話がよく出てきます.
間違ってはいないです.
でも,博士号を取ろうと思っている時点で,だいたい研究は好きだと思います.研究が嫌いで知的好奇心もなくて,仕事が終わったあと大学院へ通って博士論文を書きたい人がいたら,逆にかなり興味があります.
だから僕にとって,そこはあまり選別条件になりません.
モチベーションの理由も何でもいいと思っています.研究を続けたいでもいいし,博士という肩書きが欲しいでもいいし,キャリアのためでもいい.
必要なのは,やり切る覚悟です.
博士号を取れば会社員として仕事ができるようになるとか,博士を取れば出世や給料アップが約束されるとか,そういう期待をしているなら僕はおすすめしません.
博士号が実務でどれくらい役に立つかについては,別の記事で書きました.
社会人博士に向いていない人は,「まだ実績がない人」
ぶっちゃけタイム開始です.
僕が「社会人博士に向いていない人は?」と聞かれたら,答えはかなり単純です.
実績がない人です.
ただし,「あなたは一生博士に向いていません」という意味ではありません.
今はまだ早い,というだけです.
まず仕事の中で研究を進める.査読付き論文を出す.自分の研究が第三者から評価されるところまで持っていく.そのうえで指導教員へ相談して,博士を取れる状態か確認する.
僕なら出願前に,最低でも次の3つを確認します.
1.今の研究実績と,志望する研究科の修了要件にどれくらい差があるか
2.指導教員との関係が良く,相手からも博士を取れると評価されているか
3.研究に必要な拘束時間を確保でき,仕事と家族の話をまとめられているか
この3つが揃っているなら,社会人博士はかなり現実的になってくると思います.
逆に言えば,社会人博士に向いているかを性格診断みたいに考えすぎなくていいです.
研究が好きか.
知的好奇心があるか.
メンタルが強いか.
そんなことより,まず実績を見ればいい.
社会人博士に向いている人は,実績がある人です.
そして,そこまで来ているなら,僕は博士号は取った方がいいと思っています.
以上,ご清聴ありがとうございました.
