映画『悪魔はいつもそこに』ネタバレ感想|牧師がクズすぎる.敵ばかりの嫌な田舎【★3.5】

映画『悪魔はいつもそこに』のネタバレ感想アイキャッチ.敵ばかりの嫌な田舎という評価と★3.5を示した水彩タッチのイラスト

※この記事は映画『悪魔はいつもそこに』の結末までネタバレを含みます.

「映画『悪魔はいつもそこに』は面白かったのか」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.

ヌクレ博士評価:★3.5 / 5.0


この記事を書いた人

ヌクレ博士
ヒーロ映画が大好きおじさん
ドラマの多いヒーロ物に弱い
歴代映画ランキングを是非見てね!
X:https://x.com/nucleotidefilm


好きな部類の映画です.ただ,★3.5の中ではかなり★3.0寄りです.映画全体のテーマやアーヴィン自身のドラマにものすごくハマったわけではありません.それでも,あとから思い出せる場面がいくつもある.だから★3.0ではなく★3.5でした.

人物で一番残ったのは,クズ牧師とトム・ホランドです.

なんだその並び.

では蓋を開けてみよう.

映画『悪魔はいつもそこに』のネタバレなし人物相関図.アーヴィンを中心に,ウィラード,シャーロット,レノラ,プレストン牧師,カール,サンディ,リー・ボデッカーの関係を整理した図

プレストン牧師がマジでクズ.最初から最後まで嫌なやつ

この映画で一番腹が立ったのは,プレストン牧師です.登場した時点からもう嫌でした.アーヴィンの祖母エマが教会の食事会へ持ってきたチキンレバーを見て,「貧しい人はこれしか持ってこられない」みたいな説教を始める.しかも自分がそれを食べることを,キリストにならった自己犠牲みたいに語る.

いや,何してんのこいつ.

エマは料理を楽しみに持ってきただけなのに,みんなの前で貧しさの象徴みたいに扱われる.あの場面だけでも十分に嫌なやつなのですが,本番はその後です.

プレストンはレノラを宗教的な言葉で丸め込んで性的に利用し,妊娠させます.ところがレノラが妊娠を伝えると,自分は関係ないという態度で切り捨てる.レノラは追い詰められて自殺しようとし,直前に思い直したものの事故で亡くなります.

僕からすると,ほとんど自殺に追い込んだようにしか見えませんでした.

だからアーヴィンがプレストンを撃つ場面も,「ざまあ!」とはならなかったです.牧師はマジでクズなのですが,それ以上に「アーヴィン,またこんなものを背負わされるのか」という気持ちの方が強かった.この映画,アーヴィンがずっと不幸なんですよね.

宗教が強くて閉鎖的.この「嫌な田舎感」が一番残った

僕がこの映画を見終わって一番強く残ったのは,「嫌な田舎だなあ」でした.この映画が描く戦後のアメリカの田舎町は,宗教の力が強く,閉鎖的で,いじめや性的搾取や犯罪がずっと薄暗くまとわりついています.

プレストンみたいな人間が牧師という立場で偉そうに振る舞える.レノラはその立場を利用される.アーヴィン自身も,子どもの頃から暴力や死に囲まれて育ち,大人になってもまともな出口がほとんどありません.

そして何より嫌なのが,犯罪を犯罪でしか解決できない感じです.レノラを傷つけた牧師を止めるのも殺人.殺人夫婦から生き残るのも殺人.最後は汚職警官とも撃ち合う.悪いことが起きるたびに,さらに別の暴力で片付けるしかない.

そりゃ幸せになれなそうだわ.

この「どこへ行っても敵ばっかり」という不条理が,僕にはこの映画の一番強い印象でした.陰鬱ではあるのですが,ずっと胸糞全開というより,うっすら嫌な感じが続く.その空気は結構よかったです.

殺人夫婦は面白い.サンディはかなり可哀想だった

殺人夫婦のカールとサンディも印象に残りました.特にサンディです.人殺しに加担しているので善人ではないのですが,見ていると「この人もかなり悲惨だな」と思ってしまいました.

カールはサンディを男を誘うための餌にして,身体を使わせ,その様子まで写真に撮る.サンディ自身はもう殺人を続けたくなくなっているのに,カールは彼女を信用できなくなり,最後にはサンディの銃へ空砲を仕込んでいました.

この空砲がよかったんですよね.単なる撃ち合いだけではなく,夫婦のドラマまで乗っている.アーヴィンとの殺し合いは,絵としてもドラマとしてもかなり面白かったです.

そしてアーヴィン,勘が良すぎる.

何だそのスパイダーセンス.

殺人夫婦の危険さを察して先に動くところは,トム・ホランドなので完全にピーター・パーカーが頭をよぎりました.スパイダーマンについては,僕が映画9作をまとめて順位付けしたランキングでも散々語っています.

タイトルの意味が分かると,急に終わるラストも悪くない

映画『悪魔はいつもそこに』のネタバレあり人物相関図.アーヴィン,レノラ,プレストン牧師,ウィラード,カールとサンディ,リー・ボデッカーの関係と,妊娠,射殺,追跡,返り討ちなどの展開を整理した図

最初に見終わったときは,タイトルの『悪魔はいつもそこに』が何を意味しているのか,正直よく分かりませんでした.ラストも「なんか急に終わったな」という印象で,アーヴィンのその後をもう少し見たかったです.

ただ,監督アントニオ・カンポスのインタビューを読むと,この映画は宗教そのものを単純に悪として描くというより,人が信仰によって酷い行為を正当化してしまうことを描いています.宗教家ではないカールの殺人にも,彼の中では宗教に近い自己正当化がある.

これを知ると,僕には「悪魔」が特定の一人を指しているようには見えなくなりました.牧師もいる.殺人夫婦もいる.汚職警官もいる.アーヴィンが一人倒しても,また次の敵が出てくる.

要するに,敵ばっかりです.

この不条理を描きたかったのだと考えると,タイトルはかなりしっくりきました.急に終わったように感じたラストも,「これで全部解決しました」という話ではないなら悪くない.納得できました.

総合評価|★3.5.好きな部類だけど,かなり★3.0寄り

最終評価は,★3.5 / 5.0です.好きな部類の映画ではあります.ただ,★3.5の中ではかなり★3.0寄りです.

映画全体として何を一番言いたいのかや,アーヴィン自身の人生ドラマに強烈にハマったわけではありません.テンポもゆっくりで,少し退屈に感じる時間はありました.でも,クズ牧師,殺人夫婦との空砲の駆け引き,アーヴィンのスパイダーセンスみたいに,印象に残る場面が何個もある.そこが★3.5まで上がった理由です.

人にすすめるかと聞かれたら,「人は選ぶかな」と答えると思います.映画が好きならいけるんじゃないでしょうか.もう一度見ても苦痛ではないけど,自分から積極的に見返すほどではありません.

そして結局,一番残ったのはやっぱりこれです.

嫌な田舎だったなあ.

以上,ご清聴ありがとうございました.

参考資料

Netflix Media Center『The Devil All The Time』

BFI Sight and Sound「People can justify awful things through their faith: Antonio Campos on The Devil All the Time」

新潮社『悪魔はいつもそこに』