※この記事は映画『ブゴニア』の重大なネタバレを含みます.特に終盤の正体と結末まで普通に書きます.まだ見ていないなら,本当に何も調べずに見てください.
「映画『ブゴニア』は面白かったのか」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.
この記事を書いた人

ヌクレ博士
ヒーロ映画が大好きおじさん
ドラマの多いヒーロ物に弱い
歴代映画ランキングを是非見てね!
X:https://x.com/nucleotidefilm
ヌクレ博士評価:★★★☆☆ 3.0 / 5.0
最初に言っておくと,途中までは相当面白かったです.あのまま終わっていたら★4.0をつけていたと思います.
誘拐計画はガバガバ.陰謀論もガバガバ.テディはどう考えても頭がおかしい.なのに状況にはずっと緊張感があって,「このイカれた男をミシェルはどう攻略するんだ?」と気になって画面を見てしまう.
めちゃくちゃ面白かったんですよ.
なのに最後,本当に宇宙人でした.
は?
もうこれです.僕はあの瞬間から一気に見る気が失せました.途中まで★4.0,あのオチだけなら★1.0をつけたいくらい嫌いです.総合したら★3.0.
せっかく面白かったのに最悪です.
では蓋を開けてみよう.
誘拐するところからすでにバカ.でもめちゃくちゃ面白い

『ブゴニア』は,大企業オークソリスのCEOミシェルを,陰謀論に取り憑かれたテディとドンが誘拐するところから始まります.
理由は,ミシェルが地球を滅ぼそうとしているアンドロメダ星人だから.
意味が分からない.
しかも計画がめちゃくちゃ練られているのかと思ったら,捕まえるところから全然うまくいかない.誘拐する側が思ったように相手を制圧できず,最初から「お前ら大丈夫かよ笑」となる.
でも本人たちは死ぬほど真剣です.
ここが良かった.
公式ジャンルはスリラー/ダークコメディですが,まさにその通りで,状況は怖いのにずっとバカらしい.宇宙人の真似をしたり,陰謀論を本気で語ったり,計画のあちこちがガバガバだったりするのに,ミシェルは本当に命の危険にさらされています.
だから笑えるのに緊張する.
『ユナボマー』は気づくと画面から意識が飛んでいましたが,『ブゴニア』は比べ物にならないくらい見てしまいました.次に何をするのか気になるんですよね.
テディは「嫌いだから好き」な最高にイカれたキャラだった
テディは好きかと聞かれたら,嫌いです.
だから好きです笑
陰謀論者としての意味の分からなさがすごい.「なぜそこまで信じられるんだ」と思うくらいミシェルを宇宙人だと決めつけ,普通の会話が成立しない.
だからこそキャラクターとして面白いんです.
ミシェル本人には特に思い入れはありませんでした.僕が見たかったのは,「こんな理屈の通じない相手に捕まって,どうやって逃げるんだ」という部分でした.
ミシェルが何を言っても,テディの中では陰謀論へ変換される.普通の説得が通じない.それでもミシェルは生きるために話を合わせ,テディの理屈へ入り込もうとする.
この駆け引きがずっと面白かったです.
母親の話が出てきて,「ただの陰謀論者」ではなくなった
さらに良かったのが,テディの母親サンディの話です.
オークソリスの新薬治験を受けた母親が昏睡状態になっていることが分かり,テディの異常な執着にも背景が見えてきます.
ここで僕はかなり深読みしました.
「こいつ,本当に宇宙人を信じてるのか?」
もしかすると,母親をこんな状態にした会社とミシェルを殺したいほど恨んでいて,宇宙人の陰謀論は後付けなんじゃないか.本人自身も気づいていない復讐心が,全部を宇宙人の話に変換しているんじゃないか.
そう思ったんですよね.
ただのイカれた陰謀論者だったテディに,人間としての理由が見えてきた.この辺りで僕はさらに面白くなりました.どんな映画でも,人間ドラマが出てくるとやっぱり面白いです.
ところがテディは,ミシェルから「母親を治せる薬だ」と言われ,不凍液を母親の点滴へ入れてしまいます.そして母親を自分で死なせる.
頭おかしすぎるだろ.
でも物語としては良かったです.テディの狂信が現実の取り返しのつかない結果につながるし,ここまで来ると単なるバカ映画では済まなくなってくる.
ドンが死ぬところも同じです.普通にかわいそうだし,「そこまで行くのか」と引きました.でも物語として見ると,まさしく起承転結の「転」でした.
バカな誘拐劇だった話が,ここからどんどん取り返しのつかない方向へ転がっていく.
ここまでは本当に好きでした.
テディが爆発したところから,嫌な予感が始まった
終盤,ミシェルは自分がアンドロメダ星人だという話に完全に乗ります.そしてオークソリス本社のクローゼットが母船への転送装置だと説明し,テディを中へ入れます.
テディは自爆ベストを身につけたままクローゼットへ入り,そこで突然爆発します.
ここで僕は,「え?なんで爆発した?」となりました.
クローゼットに何か仕掛けがあったのか.ミシェルが何かやったのか.それとも……まさか本当に転送装置なのか.
この辺から嫌な予感が始まります.
爆発したテディの首が飛んできたところは笑いました.バカすぎる笑
ただ,「まさか本当に宇宙人ってことにはしないよな?」という感じが少しずつ強くなっていきました.
そしてミシェルが再び会社へ戻り,クローゼットを使う.
本当に転送される.
本当に宇宙人だった.
は?

本当に宇宙人だった瞬間,それまで面白かったものが全部薄くなった
ここで僕は完全に見る気を失いました.
ダークコメディなので,「本当に宇宙人でした!」という馬鹿馬鹿しいオチそのものは笑えるのかもしれません.実際,この映画では何度も笑いました.
でも,笑えることと好きなオチであることは別です.
僕が面白いと思っていたテディは,「どう考えても頭がおかしい陰謀論者」でした.その狂った人間を相手に,ミシェルがどう脱出するのかが面白かった.
ところが本当にミシェルが宇宙人だったら,テディは一番重要なところで正解していたことになります.
それ,嫌なんですよ.
さらに僕は,母親の件を知って「もしかして宇宙人説なんて建前で,本当はミシェルへの復讐心が核なんじゃないか」と勝手に深読みしていました.そこに人間ドラマがあると思ったから面白かった.
なのに本当に宇宙人でした.
なんだよ宇宙人って.最悪.

ミシェルがなぜテディの宇宙人話にここまで乗るのかも,「どうやってこの狂人を騙して逃げるんだろう」という駆け引きとして見ていたから面白かったんです.
でも本当に宇宙人なら,そりゃ話に乗るわ.
僕が面白いと思っていたものに,全部そのままの答えを出されてしまった感じでした.
韓国映画『地球を守れ!』が原作だと後から知った
鑑賞後に調べて知ったのですが,『ブゴニア』は2003年の韓国映画『地球を守れ!』を基にした作品です.
これを知って,個人的には少し納得しました.
僕は韓国作品で,「最後に大きな驚きを作ることを優先して,そこまで積み上げた人間ドラマの機微が置いていかれた」と感じる作品が苦手です.今回のラストも,僕にはまさにそれに見えました.
もちろん原作を見ていないので,『地球を守れ!』そのものについて評価するつもりはありません.あくまで『ブゴニア』を見た僕の感想です.
宇宙人という大きなサプライズは確かにあります.
でも僕は驚きたかったんじゃない.
テディというイカれた陰謀論者と,捕まったミシェルの人間同士の話を最後まで見たかったんです.
ミシェルがうまく脱出してテディへ復讐してもいい.逃げ切ったと思ったところで別の陰謀論者にまた捕まってもいい.終わらせ方なんていくらでもあったと思います.
本当に宇宙人だけはやめてほしかった.
総合評価|★3.0.途中まで面白かったからこそ,オチが本当に嫌い

最終評価は,★★★☆☆ 3.0 / 5.0です.
途中までは★4.0をつけたいくらい面白かったです.誘拐計画のガバガバさ,テディの意味不明な陰謀論,ミシェルとの緊張感ある駆け引き,母親を巡る背景,ドンの死で大きく物語が動くところまで,普通にかなり楽しんでいました.
だからこそ嫌なんです.
最初からつまらなかった映画なら,「まあ合わなかった」で終わります.でも『ブゴニア』は面白かった.かなり面白かった.
それを最後の宇宙人オチで全部台無しにされた気分です.
宇宙人確定後は完全に興味が切れて,その後の人類全滅まで僕はほぼ気づいていませんでした.後から整理して,「あ,人類まで全滅してたのね」くらいです.そのくらい僕の中では,宇宙人だと分かった瞬間に映画が終わっていました.
人におすすめするかと聞かれたら,積極的にはすすめません.
ただ,「ブゴニアって面白い?」と聞かれたら,僕はたぶん何も答えません.
「何も調べずに見てみたら」
これだけ言います.
途中までめちゃくちゃ面白かった.
だからこそ,せっかく面白かったのに最悪です.
以上,ご清聴ありがとうございました.
