「3歳児って,なんで答えを知っているのに同じ質問を何回もするの?」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.
うちのボス3歳は,生き物が大好きです.会話もかなりできるようになってきて,好きな話なら「なんで?」「あとは?」と質問を重ねながら延々と話しています.
そんなボス3歳が最近よく聞いてくるのが,
「パパ,なんの虫が好き?」
という質問です.
普通に答えます.するとしばらく虫の話をして,「あとは?」「え,そうなの?」と会話が続く.ここまでは別に普通です.
問題は,また聞いてくることです.
「パパ,なんの虫が好き?」
いや,それ前にも答えたぞ.
ほかにも「トマト好き?」みたいな好き嫌いの質問をよくされます.しかも,どう考えても答えを忘れている感じがしない.答えると「あとは?」「え,そうなの?」と普通に続きを話してくるんです.
かわいい.かわいいんだけど,永遠に相手をしていると普通に疲れる.
そしてずっと気になっていました.
答え知ってるのに,なんで聞くの?
では蓋を開けてみよう.
3歳が同じ質問をする=答えを忘れている,とは限らない
最初に考えたのは,単純に「まだ3歳だから答えを覚えていないのかな?」でした.
でも,ボス3歳を見ているとちょっと違う気がします.
「パパなんの虫が好き?」と聞かれて答えると,そこで会話が終わるわけではありません.「あとは?」「え,そうなの?」と話を広げてきます.質問そのものより,そこから始まる会話を楽しんでいるようにも見えます.
実際,幼児の質問について調べた研究では,子どもの質問はすべてが「知らない情報を得るため」だけではなく,「会話のため」「相手に何かしてもらうため」といった異なる機能を持つことが報告されています.
ボス3歳の場合,実際のやり取りを見ると会話目的にも見えます.
「答えを知っているのに質問する」は大人もやっている
もう一つ気になったのが,
「もしかして親の真似では?」
という可能性です.
考えてみれば,親も子どもにめちゃくちゃ質問しています.
「何の虫が好き?」
「これ好き?」
「今日は何したの?」
「これ何色?」
しかも,大人側が答えを知っている質問も普通にします.
2019年の『Child Development』に掲載された研究では,2〜6歳の子どもと親の会話から2,166件の質問を分析しています.その中では,親がすでに答えを知っているのに,子どもへ尋ねる「pedagogical questions」と呼ばれる質問が日常的に使われていました.
要するに,大人だって答えを知ってるのに聞いてる.
子どもからしたら,
「質問ってそういうもんなんじゃないの?」
と思っていても全然おかしくない気がします.
もちろん,この研究は「親が質問するから,3歳児も同じ質問を繰り返すようになる」と証明したものではありません.そこまで言ったら盛りすぎです.
ただ我が家では,親が普段から「何が好き?」という質問をかなり使っています.そしてボス3歳も同じような質問を繰り返す.
少なくとも,
「誰の影響だろうなあ?」
と言いながら親だけ完全に無罪を主張するのは無理そうです.
僕の仮説は「いないいないばあ」と同じなのでは?
ここからは完全に僕の仮説です.
ボス3歳は,答えを知っているからこそ聞いているんじゃないかと思っています.
赤ちゃんの「いないいないばあ」って,何回やっても笑いますよね.顔が消えて,また出てくる.もう次に何が起きるか分かっているはずなのに,またやる.
それと少し似ているんじゃないかと.
「パパなんの虫が好き?」
↓
いつもの答えが返ってくる
↓
「あとは?」
↓
また話が始まる
この一連の流れそのものを楽しんでいるんじゃないか.
ただし,「予想した答えが返ってくることを3歳児が楽しむから,同じ質問をする」ということを直接示した研究は今回見つかりませんでした.
なので,
いないいないばあ仮説,証明ならず.
でも我が家のやり取りを見ていると,完全に捨てる気にもなれません.
もしかして質問が「会話の再生ボタン」になっている?
今回調べて,一番しっくりきたのはこれです.
ボス3歳にとって,
「パパなんの虫が好き?」
は,情報を取り出すだけの質問ではなく,
「このボタンを押すと,パパと虫の話が始まる」
という会話の再生ボタンみたいになっているんじゃないか.
質問する.
パパが答える.
「あとは?」と聞く.
また答える.
「え,そうなの?」と返す.
本人はこの型をもう知っています.
しかも,虫や魚はボス3歳の得意分野です.好きな話なら長く会話できます.自分がよく知っている話題から始めれば,その後の会話も続けやすい.
そう考えると,「答えを覚えているのに質問する」という一見謎の行動も,そこまで謎ではなくなります.
答えを聞きたいんじゃなくて,その先をやりたいのかもしれない.
もちろん,子どもが同じ質問をする理由は一つではありません.予定が気になって確認したい場合もあれば,不安だったり,本当に答えを忘れていたりする場合もあります.自治体の子育て相談でも,同じ質問を繰り返すこと自体はあり得るとしたうえで,答えても聞こえていないような状態が続く場合などには相談することが勧められています.
だから,「同じ質問をする=全部会話遊び」と考えるのも違います.
我が家の場合は,答えたあとにその話題で会話が続く.しかも好き嫌いの質問が多い.だから僕には「会話を始めたい」がかなり入っているように見える,という話です.
疲れるけど,もう少し付き合ってみようと思う
ぶっちゃけ,同じ質問を何度もされると疲れます.
「パパなんの虫が好き?」
知ってるだろ.
2分前も言ったわ.
でも今回調べてみて,「答えを忘れているのに,また同じことを聞いている」とだけ考える必要はなさそうだと思いました.
そもそもボス3歳は,好きな話なら「なんで?」「あとは?」と質問を重ねながらかなり長く話します.今回の好き嫌い質問も,その会話の入り口なのかもしれません.
そして親自身も,同じような質問を子どもへ大量に投げています.
そう考えると,
子ども「パパなんの虫が好き?」
親「またその質問?」
ではなく,
子ども「いつもの虫の話しようぜ」
くらいに脳内翻訳した方が,ちょっとだけ付き合いやすい気がします.
まあ,10回目くらいになると普通に疲れますけどね.
そのうち「パパなんの虫が好き?」なんて聞いてくれなくなるでしょう.今はかわいいと思えているので,もうしばらく同じ会話を再生しておこうと思います.
ボス3歳が言葉そのものをどう扱っているかについては,しりとりを覚えていった過程もかなり面白かったです.最初は「ドア→コアラ」だったのに,今では普通に長く続けられるようになりました.
以上,ご清聴ありがとうございました.
参考文献・参考資料
・James SL, Seebach MA. “The Pragmatic Function of Children’s Questions.” Journal of Speech, Language, and Hearing Research. 1982;25(1):2-11.
・Yu Y, Bonawitz E, Shafto P. “Pedagogical Questions in Parent–Child Conversations.” Child Development. 2019;90(1):147-161.
・浜松市子育て情報サイトぴっぴ「『なんで』『どうして』としつこく聞く」
