※この記事は『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』および『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の重大なネタバレを含みます.
「『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』のMJとのキス,あれは最高だったのか最悪だったのか?」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.
僕が『ブランド・ニュー・デイ』を観ていて,一番感情をぐちゃぐちゃにされたのがあのキスでした.
ピーターとMJがキスした瞬間,最初に思ったことはこれです.
やりやがったな.
一番嫌な展開が来たと思いました.
「ノー・ウェイ・ホーム」を無駄にするのかと思った
『ノー・ウェイ・ホーム』のラストで,ピーターはMJとネッドを守るため,自分の存在を世界から忘れさせました.
僕はあの終わり方が大好きです.
好きな人に自分を思い出してもらえない.それでも,彼女が幸せそうにしているのを見て,自分から関係を取り戻そうとしない.
めちゃくちゃつらいけど,ピーター・パーカーらしい決断でした.
だから『ブランド・ニュー・デイ』でMJと再会して,ちょっといい感じになって,そのままキスして記憶まで戻りました,となったらどうなるか.
いやいやいやいや.
あの『ノー・ウェイ・ホーム』のラストは何だったんだよ.
魔法も,ピーターの決断も,あのコーヒーショップで声をかけられなかった切なさも,全部数年後のキス一発で解決するの?
それだけはやめてくれと思いました.
ただ,困ったことに映像としては良かったんです.
過去のスパイダーマン映画を思い出させるようなロマンチックな見せ方で,ずっと一人だったピーターの立場に感情移入して観ていたので,
「良かったなピーター……」
とも思ってしまった.
頭では「やめろ!」なのに,感情では「良かったな!」になっている.
この時点でもう完全に映画に転がされています.
このシーンが刺さる理由は『ノー・ウェイ・ホーム』のラストにあるので,うろ覚えなら一度見返してから『ブランド・ニュー・デイ』を観るとだいぶ印象が変わると思います.
蓋を開けてみると,MJじゃなかった
そして直後です.
MJがピーターを思い出したわけではなかった.
彼女の身体を操っていたのは,あの謎の能力者でした.後にその正体がジーン・グレイだと判明します.
本物のMJは,操られていた間のことを覚えていません.つまりピーターが見た「自分を思い出してくれたMJ」そのものが罠だった.
ここで僕の評価が180度変わりました.
最高にゾクゾクした.
『ノー・ウェイ・ホーム』を無駄にしていなかった.
むしろ逆です.
ピーターがずっと欲しかったものを一瞬だけ目の前に出して,
「やっと戻ってきた」
と思わせてから,
全部偽物でした.
と叩き落とす.
エグすぎる.
この時点では,僕はまだ「こいつがジーン・グレイだ」とは分かっていませんでした.だから感想としては,
このヴィラン,ヤバすぎるだろ.
でした.
正体がジーンだと分かってからは,
ジーン・グレイ,マジで嫌い.
になりました.
でも,これってヴィランとしてはめちゃくちゃ成功しているんですよね.
ピーターを殴るでもない.家を壊すでもない.一番欲しかったものを利用して精神的にぶっ刺してくる.
クソ腹立つ.
最高です.
このキスは「最高」なのか「やりすぎ」なのか
ぶっちゃけタイム開始です.
僕はこの展開が大好きです.
ただ,観客の反応を調べてみると,やっぱりここはかなり評価が割れています.
肯定的な見方は分かりやすいです.
『ノー・ウェイ・ホーム』の結末を簡単にリセットせず,観客に一瞬だけ「MJが思い出したのでは?」と思わせてから裏切る.ピーターの孤独をさらに強調する罠として強烈に機能しています.
僕も完全にこっちでした.
一方で,かなり嫌悪感を持った人もいます.
理由は,ジーンがMJ本人の意思とは関係なく身体を操り,その身体でピーターとキスしたことです.
海外のファンコミュニティでは,「同意のない身体的接触をツイストのために使うのはどうなのか」という反発も出ています.
これは確かに分かる.
ジーンはこの後,将来的にX-MEN側の重要人物になっていくキャラクターです.それなのに初登場でここまでやらせてしまって,あとから普通にヒーローとして見られるのかという問題もある.
実際,脚本家はジーンについて「結果として誰も殺していない」というラインを意識していたことを明かしています.将来的に救済できるキャラクターとして残す狙いがあったようです.
でも観客側からすると,
「いや,人を殺してなければいいって話でもなくない?」
となるのも分かる.
他人の身体を乗っ取る.ピーターの感情を利用する.MJの身体でキスする.そのうえピーターを精神的にボコボコにする.
殺してはいない.
でも,普通にめちゃくちゃ嫌な奴です.
だからこそ,このシーンは面白い.
「最高のヴィラン演出だった」と「さすがにやりすぎだろ」が,同時に成立してしまうんです.
スウィング中のMJ,もうジーンだったんじゃない?
そして,観終わったあとに一つ気になったところがあります.
キスの少し前,ピーターがMJを連れてスウィングする場面です.
僕は観ているとき,
「MJ,あんまり怖がってなくない?」
と少し違和感がありました.
そのときは深く考えませんでした.でも後からMJがすでに操られていたと分かると,
あの時点でもうジーンだったんじゃない?
と思えてきます.
実際,海外でも同じ場面について「スウィング中のMJが妙に落ち着いているのは,すでにジーンに支配されていたからでは」という指摘が出ています.
ただし,これは今のところ公式に「伏線です」と説明されたものではありません.
なので僕の中では考察止まりです.
でも,もし意図的ならかなり好き.
初見ではちょっとした違和感だけ残して,真相を知ってから見ると意味が変わる.
こういう伏線,大好きです.
結論:僕は「最高」派.でもジーンは最高に嫌い
結局,このキスシーンをどう評価するか.
僕はかなり好きです.
最初は本気で,
「『ノー・ウェイ・ホーム』を無駄にしやがった」
と思いました.
でも蓋を開けてみると,まったく逆でした.
『ノー・ウェイ・ホーム』でピーターが失ったものがちゃんと失われたままだからこそ,ジーンの罠が効いている.
ピーターが一番欲しかったものを偽物として与える.
そして僕ら観客まで一緒に騙す.
そりゃピーターが不憫すぎるし,ジーンのことも嫌いになります.
ただ,映画を観てヴィランをここまで嫌いになったなら,少なくとも僕に対してはこのシーンは大成功だったんだと思います.
そして何より,一瞬でも,
「良かったなピーター」
と思ってしまった自分まで罠にかかっていたのが悔しい.
クソ腹立つ.
でも最高でした.
でも,その後の話を見るとジーンのこと嫌いになれないんだよな.
ジーンが出る今後のX-MENが楽しみです.
『ブランド・ニュー・デイ』を含めた実写スパイダーマン9作品の僕の順位はこちらです.
以上,ご清聴ありがとうございました.
参考資料
- SYFY WIRE「Sadie Sink’s Spider-Man: Brand New Day Mystery Character, Explained」
- ELLE「Where Peter Parker and MJ’s Relationship Stands at the End of Spider-Man: Brand New Day」
- GamesRadar+「Spider-Man: Brand New Day writers confirm Jean Grey didn’t kill anyone」
- Reddit r/marvelstudios/r/CharacterRantの公開議論
