管理職はなぜつらい?僕が一番しんどいのは部下に評価を伝えるとき

評価を伝えるしんどさ

「管理職はなぜつらいのか」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.

僕は管理職になりたくてなった人間です.給料を上げたかったし,自分で動かせる仕事を増やしたかった.実際になった今も,管理職は楽しいし,もう一度選べるならまた選びます.

それでも,管理職の仕事には普通につらいことがあります.仕事が多いことも,上の人に怒られることも,もちろんしんどい.でも,僕にとって一番重いのはそこではありません.

頑張っている部下に,思わしくない評価を伝えることです.

評価をつける瞬間だけじゃない.その結果を本人に伝えたとき,やる気をなくしてしまわないか.もしかしたら,会社を辞めるきっかけになるんじゃないか.その責任を考えると,簡単な仕事だとはとても言えません.

では蓋を開けてみよう.

管理職のつらさは,忙しさだけではない

管理職がつらい理由として,仕事量や責任の重さ,上司と部下の板挟みがよく挙げられます.僕も実際,管理職になった当初は自分のプレイヤー業務を大量に抱えていて,部下の相談や判断を優先した結果,自分の仕事が夜へ押し出される時期がありました.

ただ,その働き方は変えられました.会議や繰り返しの作業を減らし,部下に任せられる仕事は少しずつ剥がして,今は僕がいなくても日常のプレイヤー業務がほぼ回る状態になっています.忙しいなら,仕事の持ち方を見直す余地はあります.

それと比べて,人を評価する責任は,プレイヤー業務のように誰かへ剥がして終わりにはできません.評価をつけることも,本人へ伝えることも,管理職として引き受ける仕事です.

僕にとって「管理職がつらい」の核心は,仕事が多いことより,その仕事の結果が人に直接届くことです.

一番しんどいのは,頑張っている人に低い評価を伝えること

部下はみんな,それぞれ頑張っています.僕はその人の人柄や得意なことも,仕事への挑戦も褒めたいと思っています.ただし,頑張っていることと,評価で求められる結果が出ていることは,いつも同じではありません.

結果が思わしくなければ,それを評価として伝えなければならない.その人が努力していることを知っているからこそ,しんどいです.

しかも,評価は伝えて終わりではありません.相手がやる気をなくすかもしれない.最悪,会社を辞めてしまうかもしれない.そう考えると,「結果は結果なので」で片づけることはできません.

実際,ALL DIFFERENTが2025年に行った管理職意識調査では,課長クラス以上の回答者のうち,部下の評価について「チーム内で極端な評価をつけることをためらってしまう」と答えた人が27.9%でした.部下への日頃のフィードバックでも,ためらった経験のある人が半数以上いました.なお,この調査で尋ねた日頃のフィードバックと,僕が一番しんどいと話している評価結果の通知は,同じ場面ではありません.

評価やフィードバックに難しさを感じる管理職は,僕だけではないようです.でも,調査の数字を見ても,目の前の部下へ何をどう伝えるかが簡単になるわけではありません.

「僕の責任だ」と伝える.でも,評価を甘くするわけではない

僕は,評価が思わしくなかった部下には,自分の責任だと伝えます.成長できる仕事を振れたか.適切なアドバイスができたか.そこは管理職である僕の仕事だからです.

そして,「取れる仕事を振るから頑張ろう」と話します.本人が次に挑戦できる仕事を考えて,機会を渡す.評価の結果を伝えて,はい終わり,にはしたくありません.

だからといって,部下に改善すべき点がないと言っているわけでも,評価を甘くつけるわけでもありません.本人が向き合うべき結果は結果として伝えます.そのうえで,次の機会を作るのは僕の責任.その機会をどう使うかは,本人が向き合うことです.

人を大事にすることと,何でも高く評価することは別だと思っています.

ぶっちゃけ,全員にいい評価をつけられたら,伝える側だって楽ですよ.でも,それで評価の仕事をしたことになるのか.僕はそうは思いません.

上の人に怒鳴られるのも腹が立つ.それでも部下へ丸投げはしない

評価とは別に,管理職としてしんどいのが上の人とのやり取りです.現場の事情を十分に知らない上司から怒鳴られると,僕はめちゃくちゃ腹が立ちます.

現場の状況を説明するし,納得できないことには言い返します.それでも,自分の考えが通らないことはあります.管理職だからといって,すべてを好きに決められるわけではありません.

そんなとき,僕がしたくないのは,部下に「上が言っているから仕方ない」と渡すことです.部下の提案が僕の考えになったなら,それも含めて僕が責任を持つ.上とのやり取りを経て決まったことも,部下には自分の判断として伝えます.

ちなみに,僕は上司に腹が立ったあと,部下と上司の悪口を言うこともあります.いつも冷静で立派な管理職,というわけではありません.

ただ,上司への不満を話すことと,決定の責任を上司のせいにして部下へ投げることは,僕の中では別の話です.意見が通らなかったとしても,最終的に自分が引き受けた判断は,自分の仕事として伝えたいと思っています.

管理職がつらいとき,僕は「減らせる負担」と「引き受ける責任」を分けて考える

僕は管理職の仕事が好きですが,つらいことを全部「やりがい」で片づけるつもりはありません.自分の仕事が多すぎるなら減らす.判断が滞るなら,部下が動けるように自分の働き方を変える.

僕がプレイヤー業務を減らした理由も,部下が相談できる余白を作りたかったからです.仕事量を減らした経緯は別の記事で詳しく書いているので,ここでは繰り返しません.会議を減らす考え方は,こちらの記事にもまとめています.

→ 会議の参加者はなぜ多すぎる?「聞くだけ会議」が増える理由と減らす方法

でも,評価を本人へ伝える責任までなくなるわけではありません.そこは,頑張った事実と求められる結果を分けて見て,必要なことを伝える.自分にできた支援と,できなかった支援にも向き合う.そして,次に任せられる仕事を考える.

「管理職はつらいですか」と聞かれたら,僕の答えは「つらいことはある」です.特に,人の評価を伝えるのは何度やってもしんどい仕事です.

それでも僕は,人が成長して,自信を持って明るく話してくれる姿を見るのが好きです.評価を伝える重さも含めて管理職の仕事だと思っているし,今の仕事を選んでよかったとも思っています.

管理職は楽しい.でも,部下に厳しい評価を伝える日は,普通につらいです.

以上,ご清聴ありがとうございました.

参考文献・参考資料

・ALL DIFFERENT株式会社「管理職意識調査(部下の育成・人事評価編)」2025年9月22日.
https://www.all-different.co.jp/topics/20250922