プレイングマネージャーはなぜつらい?技術職の僕がプレイヤー業務を減らした理由

プレイングマネージャーはつらい?

「プレイングマネージャーはなぜつらいの?」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.

プレイングマネージャーはなぜつらい?管理職になった直後は自分の仕事を抱え,相談・判断を優先した結果,自分の残業へしわ寄せが来ました.プレイヤー業務を減らして分かった,任せる前に必要なことを実体験から整理します.

僕は今,管理職が仕事の中心です.ただ,技術資料を作ったり,問題調査をしたり,QAに入ったり,自分で手を動かす仕事もまだあります.なので,完全な管理専任でもなければ,バリバリのプレイヤーでもありません.必要なときだけ技術側へ入る管理職に近いです.

でも,管理職になった最初の頃は全然違いました.かなりの量のプレイヤー業務を抱えていました.部下からの相談や判断依頼は後回しにしたくない.だから管理職としての仕事を先にやる.すると,自分のプレイヤー業務が夜へ押し出される.結果として,自分の時間外労働だけがかなり膨らむ時期もありました.

そこで僕は,プレイヤー業務をかなり意識して剥がしました.理由は単純です.

忙しそうな管理職に,誰が相談できるよ.

管理職が常に相談と判断を受けられる状態じゃないと,組織は回らないと思っています.では蓋を開けてみよう.

プレイングマネージャーがつらいのは,仕事が二つあるからではない

プレイングマネージャーは,現場で成果を出すプレイヤーと,部下やチームを動かすマネージャーを兼ねる役割です.検索すると,「プレイヤー業務と管理業務の二重負担でつらい」という説明が大量に出てきます.これは間違っていないと思います.

労働政策研究・研修機構が50人の管理職へ行ったヒアリングでも,プレイングマネージャーである人が多く,特に管理業務の多さによって多忙になり,労働時間が長くなる傾向が報告されています.部下の業務分担,進捗,労働時間,評価,育成など,管理職が担う仕事自体がかなり多いことも示されています.

ただ,僕が一番問題だと思うのは,「仕事が二つあること」そのものではありません.プレイヤー業務と管理業務は,どちらも自分の時間を使います.でも,待たせていい時間が全然違います.

自分の資料作成は,最悪あとでできます.自分の調査も,ある程度は夜へずらせます.でも,部下の相談や判断を後ろへずらすと,その人の仕事まで止まります.一人の管理職が詰まったことで,複数人の仕事が止まることもあります.

だから僕は,管理職の仕事の中でも「相談を受ける」「判断する」は優先度をかなり高くしています.

「忙しいから相談できない管理職」は,僕はかなり嫌い

これは昔から思っていました.過去に,いつも忙しそうにしていて,相談や判断を後ろ倒しにする管理職の下で働いたことがあります.僕にとっては,かなり嫌な管理職でした.

本人は本当に忙しかったのかもしれません.でも,部下から見れば関係ありません.相談したいのに捕まらない.判断してほしいのに進まない.その一方で,上司本人は自分の仕事を大量に抱えている.

それ,管理職の仕事を自分で潰してない?

僕はそう思っていました.だから自分が管理職になったときは,少なくとも「忙しそうだから相談しづらい人」にはなりたくなかった.部下からの相談や判断はなるべく止めない.その結果,自分のプレイヤー業務が夜へ押し出される時期もありました.

当然,その働き方をずっと続けるのは無理です.じゃあどうするか.自分のプレイヤー業務を減らすしかありませんでした.

ただし,「部下に任せればいい」は簡単すぎる

ここでよく出てくるのが,「管理職は自分でやらずに部下へ任せましょう」という話です.

いや,任せる相手も忙しいんだわ.

僕がプレイヤー業務を剥がそうとしたとき,一番困ったのは「任せられる人がいない」ことでした.能力がないという意味ではありません.みんな既に仕事を持っています.新しい仕事を渡す余白がない.

だから最初にやったのは,仕事を渡すことではなく,チーム全体の時間を作ることでした.

一番削りやすかったのは会議です.聞くだけで拘束される会議を減らす.1日に何度も,あるいは週に何度も繰り返す仕事は効率化の対象にする.そして自分の判断もなるべく早く返して,止まっている時間を減らす.

会議を減らす話自体は別の記事でかなり詳しく書いたので,ここでは繰り返しません.

→ 会議の参加者はなぜ多すぎる?「聞くだけ会議」が増える理由と減らす方法

仕事を任せたいなら,まず任せる相手に時間が必要です.「管理職が抱えすぎているから部下へ渡そう」と思ったら,その前に「部下も抱えすぎていないか」を見ないと,ただ荷物を横移動しただけになります.

自分がやった方が早くても,最初はやってもらう

僕は,成長のためなら,自分でやった方が早い仕事でも最初は部下にやってもらいます.必要なら最後に僕が直します.品質や納期が危ないなら,途中で剥ぎ取ることもあります.でも,最初から全部自分でやったら,その人に経験は残りません.

管理職がプレイヤーとして優秀すぎると,「自分でやった方が早い」が無限に発生します.でも,それを全部自分で取っていたら,いつまでたっても自分しかできない仕事が増えます.しかも部下の成長機会まで奪います.

権限委譲についての2024年の研究でも,管理職は無条件に何でも任せているわけではなく,部下が持つ知識,仕事の性質,管理のしやすさなどを見ながら委譲の程度を変えていました.

つまり,「任せるのが正義」「自分でやるのが悪」ではありません.誰に,何を,どこまで任せるかは状況次第です.僕自身も,締切が危なければ仕事を引き取ります.

大事なのは,最初から「自分でやった方が早い」で全部奪わないことだと思っています.

プレイングマネージャーは,状況によってはやるべき

ここまで書くと,「じゃあプレイングマネージャーはやめた方がいいんですね」と思われそうですが,僕の結論は違います.

状況によります.

プレイヤーの頭数が足りない.チームに独力で走れる人が多い.管理職がずっと張り付かなくても相談や判断が回る.そういう組織なら,管理職がプレイヤーとして走るのは全然ありだと思っています.何なら,一番走れるプレイヤーになった方がいい場面もあるでしょう.

逆に,部下が増えてくると厳しくなります.僕の感覚では,5人前後を超えたあたりからプレイヤー業務は意識して減らした方がいい.10人を超えるなら,かなりゼロに近づけるくらいで考えます.これは一般的な適正人数を示す研究値ではなく,完全に僕の経験則です.

たとえば10人に30分ずつ1on1しただけで5時間です.そこへ日々の相談,判断,評価,突発対応が乗ります.人数だけで決まる話でもありません.仕事量,自走度,業務の難しさで全然変わります.

だから「管理職はプレイヤー業務をやるな」ではなく,「管理職として必要な余白を残せる範囲でやれ」が僕の答えです.

今は,自分がいなくてもプレイヤー業務ではほぼ困らない

いろいろ剥がした結果,今は僕がいなくても,日常のプレイヤー業務では大きく困らない状態になっています.

それでも僕が手を動かす場面はあります.難しい案件,管理職が入ることで説得力が必要な案件,緊急時,急な欠員の穴埋め,効率化や品質を上げるために一度自分で触った方がいい場面です.

つまり,プレイヤー業務をゼロにしたいわけではありません.必要なときだけ入る.普段は,部下が動ける状態を作って,相談と判断を止めない.僕にとっては,こっちの方が管理職として自然でした.

プレイングマネージャーがつらい理由は,「プレイヤーも管理職もやるから忙しい」で終わる話ではないと思っています.管理職がプレイヤー業務を抱えすぎると,本来一番止めてはいけない相談と判断の余白が消える.そして,部下へ任せようとしても,部下側に余白がなければ仕事は渡せない.

だから順番は,まず仕事を減らす.次に任せる.そして管理職は,いつでも判断できる余白を持つ.

僕はそうしています.

以上,ご清聴ありがとうございました.

参考文献・参考資料

・労働政策研究・研修機構「管理職ヒアリング調査結果―管理職の働き方と職場マネジメント―」資料シリーズNo.254,2022年.

・Williams C, Van Triest S. “Following the chain of command? How managers balance benefits and risks in granting autonomy to employees.” European Management Journal. 2024;42(1):89-97. doi:10.1016/j.emj.2022.08.007