3歳は「あと何回寝たら」を理解できる?「分かった」と言う息子を研究した

3歳は後何回寝たらを理解できる?

「3歳に『あと何回寝たら』って本当に伝わるの?」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.


この記事を書いた人

ヌクレ博士と家族
ボス3歳:電車・お魚・虫が好き
クイーン0歳:標準よりも大きい
ママ・パパ:子供たちが大好き

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子どもに少し先の予定を説明するとき,「あと3回寝たら旅行だよ」みたいに言うことがあります.「3日後」より具体的に聞こえるし,毎日やっている「寝る」を数えるだけなので,かなり分かりやすそうです.

うちのボス3歳にも,楽しみな予定について「あと何回寝たら」と説明することがあります.本人はちゃんと「分かった」と返事をします.ただ,翌日になって自分から「じゃああと2回だね」と更新することはありません.楽しみな予定なら,また「明日?」「何月?」と何度も聞いてきます.

分かったとは言う.でも,本当に日数まで分かっているのかは分からない.

そこで今回は,「あと何回寝たら」という説明は幼児にとって本当に分かりやすいのか,時間の距離を理解する研究から考えてみます.

では蓋を開けてみよう.

「あと3回寝たら旅行」は分かったと言う.でも翌日に2回にはならない

ボス3歳は,「あと3回寝たら旅行だよ」と伝えると,分かったように返事をします.説明そのものを嫌がるわけでもありません.楽しみな予定なので,むしろ何度も聞いてきます.

ただ,その返事だけでは予定までの距離を理解したのかは確認できません.少なくとも我が家では,翌日になったときに自分から「昨日3回だったから,今日はあと2回」と数え直す様子はありませんでした.

「あと3回寝たら旅行」と説明されても翌日にまた「明日?何月?」と聞くボス3歳のイメージ図

ここは僕も最初,ちょっと不思議でした.「3回寝る」というのは,「○日後」よりずっと具体的に聞こえます.毎日経験する睡眠を数えるだけなので,3歳でも分かりそうな気がするんですよね.

でも,よく考えると「あと3回寝たら」は,寝る回数を3まで数えれば終わりではありません.今日から未来の予定までを頭の中で並べて,一晩寝るたびに残りの数を3→2→1と更新し,最後に予定へ到達する必要があります.かなりいろいろやっています.

「何回寝たら」は,幼児向けとして理にかなった言い方ではある

調べてみると,「何回寝たら」という表現自体は,幼児の時間理解を助ける考え方としてちゃんと使われています.

イギリスの数学教育機関NCETMの幼児向け教材では,幼い子どもが具体的な時間の長さを経験するとき,身近な出来事を基準にする方法として「何回寝たら」を挙げています.誕生日やお出かけまでの睡眠回数をカレンダーで数え,残りの回数が減っていくことを話す方法も紹介されています.

また,2024年に発表された子どもの未来思考に関する小規模な自然観察研究では,3〜4歳児と6〜7歳児の日常的な未来についての発言を調べています.その中には,将来の出来事までの距離を「何回寝たら」で表す例もありました.つまり,「何回寝たら」は幼児の日常の中でも実際に使われる時間表現です.

ただし,「幼児向けに使われている」ことと,「3歳なら残り日数を正確に理解できる」ことは別です.今回調べた範囲では,「あと3回寝たら」と言われた3歳児が,翌日に自力で残り2回へ更新できるかを直接検証した研究は見つけられませんでした.

なので,「何回寝たらなら3歳でも理解できる」と断定するのはちょっと早いです.

日数が難しいのは「未来の距離」を扱う必要があるからかもしれない

時間の研究を見ると,幼児にとって特に難しそうなのが,「今からどれくらい離れているか」という時間の距離です.

Friedmanが4〜10歳児261人を対象に行った研究では,「今日の後半」から「約1年後」までの未来の出来事が,現在からどれくらい離れているかを子どもに判断してもらいました.その結果,4歳児は未来の距離をうまく区別できず,5歳児になると数週間・数か月先と,かなり先の出来事をある程度分けられるようになっていました.その後も年齢とともに細かな距離の判断が発達していきます.

この研究に3歳児は含まれていないので,「だから3歳はあと3回寝たらを理解できない」とは言えません.ただ,少なくとも幼児期には,未来に出来事があると分かることと,その出来事までの距離を正確に表すことが同じではないのは分かります.

前の記事でも調べたように,「昨日」「明日」の研究でも,過去か未来かという方向と,「今からどれくらい離れているか」という距離は別々に発達していました.ボス3歳が数日先でもかなり先でも「明日」と言うのも,この「距離」の難しさと関係しているのかもしれません.

ここはあくまで我が家の観察と研究を重ねた考察です.ボス3歳本人の頭の中を測ったわけではありません.

「分かった」と返事できることと,日数を更新できることは別

今回いちばん気になったのはここです.

「あと3回寝たら」と言われて「分かった」と返せることと,「一晩寝たから残り2回になった」と時間の距離を更新できることは,同じではないのかもしれません.

だから,ボス3歳が「分かった」と言ったあとにまた「明日?」と聞いてきても,「さっき説明したじゃん」とまでは思いません.僕自身,まだ本当に理解しているか分からないと思っています.

しかも,何度も聞くのは楽しい予定のときが多いです.旅行などについて何度も確認されると,「たぶんまだ分かってないんだろうな」と思う一方で,「そんなに楽しみなんだ」と僕はうれしくなります.

同じ質問を何度もすること自体にも別の理由があり得るので,そこは以前の記事で詳しく調べています.

→ 3歳はなぜ同じ質問を何度もする?答えを知っているのに聞く息子を研究した

それでも僕は「あと何回寝たら」をちゃんと教える

今回調べて,「あと何回寝たら」は意味がない説明だとは思いませんでした.むしろ「○日後」よりも,毎日経験する「寝る」を使って未来までの距離を表すので,幼児が時間を理解していくための足場としてはかなり自然です.教育資料でも使われているのは納得でした.

ただし,「何回寝たら」に言い換えれば必ず理解できるわけではなさそうです.少なくとも我が家では,「分かった」という返事と,翌日に残り回数を自分で更新する行動の間にはまだ段差があります.

だから僕は,聞かれたらその都度ちゃんと答えています.一生懸命聞いてくれるなら,全部教えればいいと思っています.一回で覚えてもらう必要はありません.

子どもって,そういうものだと思うんですよね.何度も聞いて,何度も教えられて,いつの間にか当たり前に使えるようになる.

今の結論は,「あと何回寝たら」は3歳にも時間の距離を伝えるために使いやすい表現ではあるけれど,言えば即座に残り日数まで理解できるとは限らない,です.「分かった」という返事だけで理解を判定せず,少しずつ時間の目盛りを作っている途中くらいに考えておくのが,我が家にはしっくりきました.

以上,ご清聴ありがとうございました.

参考文献・参考資料

・Friedman WJ. “The development of children’s knowledge of the times of future events.” Child Development. 2000;71(4):913-932. doi:10.1111/1467-8624.00199

・Ayson G, Atance CM. “Children’s mental time travel into the future: a functional perspective.” Philosophical Transactions of the Royal Society B. 2024;379(1913):20230399. doi:10.1098/rstb.2023.0399

・National Centre for Excellence in the Teaching of Mathematics. “Measures.” Early Years Materials.