「3歳に『あとで』『ちょっと待って』はどこまで通じるの?」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.
この記事を書いた人

ヌクレ博士と家族
ボス3歳:電車・お魚・虫が好き
クイーン0歳:標準よりも大きい
ママ・パパ:子供たちが大好き
うちのボス3歳は,「あとでね」と言われるのがあまり好きではありません.何かやりたいことがあると,基本は今すぐやりたい.「あとで」と言うと,「明日?」「何月?」と聞いたり,「お風呂入ってから?」「起きたら?」と具体的なタイミングを確認してきます.
なので最近は,「あとで」の意味自体が分からないというより,「今じゃないのは分かる.でも,いつなの?」と確認しているように見えます.しかも,タイミングが分かったうえで半べそになることもある.
一方で,「ちょっと待って」は普通に待ちます.たぶん本人なりに,「ちょっと待って」は短いと分かっているようです.
これ,時間の言葉が分からない問題と,待ちたくない問題をごっちゃにしてないか?
気になったので調べてみました.では蓋を開けてみよう.
「あとで」は分からないのではなく,具体化しようとしているように見える
ボス3歳に「あとでね」と言うと,そのまま受け流すことはあまりありません.「明日?」「何月?」と聞くこともあれば,「お風呂入ってから?」「起きたら?」と,知っている出来事に置き換えて確認してきます.
少なくとも我が家では,「あとで=今ではない」という大枠は分かっていそうです.問題は,その未来がどこなのか.「あとで」だけでは場所がぼんやりしているので,自分が分かる時間の目印へ変換しようとしているように見えます.
もちろん,これはボス3歳の内心を直接確認したわけではなく,行動から見た僕の考察です.ただ,「あとで」と言われたあとに具体的なタイミングを聞き返すので,単純に言葉の意味を知らないとは考えにくいです.
研究でも「later」のような大まかな時間語は3歳から比較的使えていた
時間語の研究を見ると,ここはかなり面白い結果がありました.
Busby GrantとSuddendorfは,3〜5歳児93人について,親への質問紙から時間に関する言葉を「言うか」と「正しく使うか」に分けて調べています.その結果,「now」のような現在を表す語や,「later」のような大まかな時間語は,最年少の3歳児でも多くの子が正確に使えていました.
一方で,「yesterday」のように特定の時間を指す言葉は,幼い頃から口にはするものの,大人と同じように正確に使えるようになるのはもっとゆっくりでした.
英語の「later」と日本語の「あとで」が完全に同じ意味とは言えませんし,親の報告を使った研究なので,そのままボス3歳へ当てはめることもできません.それでも,「今ではない,もっと後」という大まかな時間は,3歳でも比較的扱いやすいという結果は,我が家の様子とかなり合っています.
前の記事で調べた「昨日」「明日」は,日が変わるたびに指す場所まで変わります.それに対して「あとで」は,「今より後」という方向さえ分かればとりあえず使える.言葉として要求される精度が違うのかもしれません.
「分かっている」と「待てる」は,やっぱり別だった

では,「あとで」の意味が分かるなら,なぜ嫌がるのか.
我が家の答えはかなり単純です.
今すぐやりたい.
ボス3歳は,説明すれば最終的には納得してくれます.いい子なので受け入れてくれることが多いし,半べそになることはあっても,こちらが「あとで」と言った意味自体が分からなくて混乱しているようには見えません.
研究では,「待つ力」は自己制御の課題として別に測られています.2〜3歳児62人を対象にした研究では,お菓子やプレゼントに60秒間触らず待つ課題を行い,この年齢でも待てる子がいる一方,成績には個人差がありました.うまく待てた子では,報酬から視線をそらしたり,手を抑えたりする行動が多く見られています.
だから,「待てなかった=『あとで』の意味を理解していない」とは言えません.逆に,言葉を理解していても,今やりたいものを前にして待つのは別に難しい.
この2つを分けて考えるだけで,かなり見え方が変わりました.
「ちょっと待って」は待てる.たぶん短い未来だから
面白いのは,「あとで」は嫌がるのに,「ちょっと待って」なら普通に待てることです.
僕から見ると,ボス3歳は「ちょっと待って」が短い時間だと分かっているように見えます.「あとで」ほど「いつ?」と確認してこないし,実際にその場で待ちます.
ただし,「ちょっと」が何秒・何分なのかまで分かっているとは考えていません.大人同士でも「ちょっと待って」が何分なのかは人によって違います.かなり雑な単位です.
それでも,「すぐ来る未来」と「もっと先の未来」を,大人が使う言葉の違いから少しずつ分けているのかもしれません.少なくとも我が家では,「あとで」と「ちょっと待って」への反応は明確に違います.
検索すると,「ちょっと待って」は子どもには曖昧だから具体的な時間に言い換えよう,という育児アドバイスも多く出てきます.これは実用上かなり納得できます.ただ,うちのボス3歳については,「ちょっと待って」がまったく伝わっていないわけではなく,むしろ短い待機として機能しています.
なので我が家では,「ちょっと待って」を万能なNGワード扱いするより,ボス3歳が実際にどう受け取っているかを見るようにしています.
我が家では,聞かれたら「いつ」をそのまま答えている
ボス3歳が「あとで」と言われて,「お風呂入ってから?」「起きたら?」と聞いてきたら,僕はそのまま答えています.一生懸命,時間を理解しようとしているように見えるからです.
「あとでだからあとで」では,たぶん本人が知りたいことへの答えになっていません.具体的に言えるなら,「お風呂のあと」「明日」「日曜日」と教える.一回で全部覚えてもらえるとは思っていません.
これは「あと何回寝たら」や「昨日・明日」を教えるときも同じです.子どもは何度も聞くし,何度も間違える.それでも,聞かれたらその都度答えていけばいいと思っています.なお,答えを知っているのに同じ質問を繰り返すケースは別記事でも研究しましたが,今回の「いつ?」が同じ理由だとは決めつけていません.
→ 3歳はなぜ同じ質問を何度もする?答えを知っているのに聞く息子を研究した
今の僕の結論は,「あとで」が嫌だからといって,意味が分かっていないとは限らない,です.ボス3歳の場合は,「今ではない」は分かっていて,その先の「いつ?」を確認しているように見える.そしてタイミングまで分かったうえで,今やりたいから嫌がる.
理解と納得は別.理解と我慢も別.3歳児,相変わらず人間らしいです.
以上,ご清聴ありがとうございました.
参考文献・参考資料
・Busby Grant J, Suddendorf T. “Production of temporal terms by 3-, 4-, and 5-year-old children.” Early Childhood Research Quarterly. 2011;26(1):87-95. doi:10.1016/j.ecresq.2010.05.002
・Mulder H, van Ravenswaaij H, Verhagen J, Moerbeek M, Leseman PPM. “The process of early self-control: an observational study in two- and three-year-olds.” Metacognition and Learning. 2019;14:239-264. doi:10.1007/s11409-019-09199-3
