技術職で出世する人の特徴|評価される人と出世する人は別物だった

技術職で出世する人の特徴

「技術職で出世する人には,どんな特徴があるのか」というテーマについて,ヌクレ博士が研究します.


この記事を書いた人

ヌクレ博士
大企業で技術職として働き,現在は管理職をしています.
技術者としての経験と,実際に人を動かす立場になって感じたことをもとに,出世と評価の違いを研究します.


僕は長いこと技術職として働いてきました.研究をする部署もあれば,特許を作る部署もある.技術的な問題を解決する部署もあれば,複数の組織をまたいで仕事を進める部署もある.当然,評価される人のタイプもかなり違います.

ただ,いろいろな技術者を見ていると,出世する人には共通点があります.

そして最初に一番言いたいのはこれです.

「評価される人」と「出世する人」は,似ているけど別物です.

ここを混同すると,「俺の方が技術力あるのに,なんであいつが上に行くんだ」という不毛な話になります.

では蓋を開けてみよう.

1.技術職の「評価」と「出世」は別物

優秀=出世ではない

僕の感覚では,評価と出世はこう分かれます.

評価は,自分の仕事や成果に対するもの.
出世は,自分が他人や組織にどう振る舞えるかに対するもの.

研究職なら,論文の投稿数や成果が評価につながることがあります.特許を作る部門なら,特許の件数やランクが分かりやすい実績になる.技術課題を扱う部署なら,難しい問題をどれだけ解決したかが評価される.

こういう人は当然高く評価されます.僕が見てきた中でも,他の人より論文を多く出し続け,毎年のように最上位評価を取っていた人がいました.実績があるから周囲からの信頼も厚く,そのまま出世コースに乗っていった.

ただし,高評価を取れば自動的に出世するわけではありません.

今の仕事を上手にできることと,もっと多くの人を任せられることは違うからです.

これは技術者に求められる一般的な能力とも大きくズレていません.文部科学省が示す技術士のコンピテンシーでも,専門知識や問題解決だけでなく,コミュニケーション,リーダーシップ,マネジメント,評価といった能力が別々に求められています.

ぶっちゃけタイム開始です.

「俺は毎年評価が高いのに出世しない.会社がおかしい」

これ,別に矛盾してないです.

あなたは今の仕事ではめちゃくちゃ優秀.でも次の仕事を任せたいかは別.

これだけの話かもしれません.

さらに嫌な話をすると,頑固でプライドが高い人でも高評価を取ることはあります.実力が高いケースももちろんあるし,上司からすると,適当に持ち上げて気持ちよく働いてもらった方が仕事が回ることもある.

だから高評価が必ずしも,

「君をもっと上に上げたい」

というメッセージとは限りません.

2.出世する技術者の土台は「驕らないこと」

能力の話をする前に,僕が一番大事だと思っていることがあります.

自分が優秀だと思わないことです.

技術って,めちゃくちゃ広いんですよ.

ある分野では自分が詳しくても,隣の分野では後輩の方が100倍詳しいなんて普通にあります.全員に得意不得意があって,全員にその人にしかできない仕事がある.

その前提に立てば,

「あいつは仕事ができない」

なんて簡単にレッテルを貼れるはずがないと思っています.

僕なら,出世したい技術者には自分を実力のない新人だと思って,周囲を天才だと思って接するくらいでちょうどいいと言います.

そして,上司や実際に出世している人にアドバイスを求める.ここで重要なのは,聞くだけじゃありません.

一回その通りにやってみる.

技術者って,アドバイスをもらっても,
「でも僕の場合は条件が違うので」
「理屈では分かるんですけど」
とか言いがちです.

一回やれ.

やってダメなら,そこから考えればいいんです.

英国政府の科学・工学分野のリーダーシップでも,多様な専門性を尊重し,異なる視点を取り込みながら意思決定することが重視されています.

ぶっちゃけタイム開始です.

技術職で一番危ないのは,「俺は優秀だ」と思い始めた瞬間だと思っています.

自分が優秀なのは別にいい.本当に優秀かもしれない.

でも,「だから他人より正しい」に変換された瞬間から面倒くさくなります.技術なんて知らないことだらけなのに,なぜか人間の評価だけ急に全知全能になるんですよね.

後輩を見て「こいつ仕事できないな」と思ってる暇があったら,その後輩が自分より詳しいことを一個探した方がいいです.

3.技術職で出世する人に必要な4つの力

出世に必要な4つの力

3-1.技術力と実績

まず技術力です.

「上に行くほど技術はいらない」と言われることがありますが,僕は少し違うと思っています.

確かに,上の立場になると自分で技術を使う時間は減ります.でも,最初から技術がなかった人が出世したわけではないケースが多い.

若い頃に技術で評価され,実績を作り,その後に役割が変わっただけです.

実績の形は仕事によって違います.

研究なら論文.特許部門なら特許件数や質.調整系の仕事なら,問題が起きたときに相手の立場だけを聞いて終わるのではなく,技術課題そのものに入り込み,エンジンのように問題を解決していくことも実績になります.

そして技術者として一番強いのは,社内で競合がほとんどいない専門性を持つことだと思っています.

「あの分野ならこの人に聞くしかない」

この状態は強いです.しかも,その分野が会社にとって不可欠であればあるほど強い.

GoogleのEngineering Manager職を見ても,管理職だから技術が不要なのではなく,深い専門性と技術リーダーシップを土台にしながら,意思決定や人材育成まで求めています.

ぶっちゃけタイム開始です.

「技術力よりコミュ力だよね」

と簡単に言う人もいますが,技術職なんだからまず仕事しろと思います.

論文でも,特許でも,問題解決でも,専門性でも何でもいい.

「この人はこれができる」

という事実がないと話が始まりません.

口より手を動かす.

これは大前提です.

3-2.人を動かすコミュニケーション力

ここは技術者の中でかなり差がつくと思っています.

技術職って,コミュニケーションが苦手な人が比較的多い.だから逆に,ここが強いだけで一気に目立ちます.

ただし,僕の言うコミュ力は「飲み会で盛り上げる」とか「話が面白い」とかではありません.

人を動かせることです.

協力をこぎつける.部署と部署の間を埋める.難しい技術を平たく説明する.短時間で相手が何を求めているかを拾う.人をやる気にさせる.あるいは,「これはもうやるしかないな」と思わせる.

ここでよく,「相手の立場になって考えろ」と言われます.僕は,この言い方は少し違うと思っています.

相手の立場ではなく,相手の価値観で考える.

自分が相手の席に座って「僕ならこう思う」と考えても,結局それは自分なんですよ.

その人は何を嫌がるのか.何が好きなのか.何を面倒だと思うのか.何を評価するのか.どんな言葉に反応するのか.普段の会話や仕事の反応から,そういうものを少しずつ拾っていく.その人の琴線がどこにあるのかを知っている人は,人を動かすのがうまいです.

→「技術職なのに調整ばかりになる構造」

ぶっちゃけタイム開始です.

「技術者だからコミュ力はいらない」

これ,かなり都合のいい言い訳だと思っています.

本当に一人で仕事が完結するならいいです.

でも,大抵は誰かにレビューしてもらうし,他部署にお願いするし,上司の承認もいるし,後輩にも動いてもらう.

他人に動いてもらわないと仕事できないのに,人を動かす能力はいらないって,どういう理屈なんだよ.

3-3.根本課題を見つけて前に進める力

これは仕事をしているとかなり差が出ます.

例えば不具合が起きたとします.ある人は,その不具合の原因調査に全力を注ぐ.ログを見て,再現試験をして,原因を突き止める.

もちろん大事です.でも,そこで終わる人もいる.

本当にやらないといけないのは,
「そもそも,なぜこの不具合が起きたのか」
「どうすれば次から起きにくくなるのか」
「起きたとしても,どうすればすぐ見つけられるのか」
という仕組みまで考えることです.

目の前の「やるべきこと」を処理するだけではなく,次にやるべきことそのものを作れる人が前に進める人だと思っています.
そして,この力を鍛えるなら僕は人と話せと言います.

課題ほど一人で抱えない方がいい.仕事に押し潰されそうなら,「これ本当に大変なんだよね」と愚痴っていいんです.

他人と話すと,
「それ,こうしたらよくない?」
「そもそもそこやる必要ある?」
みたいな,自分の脳みそにはなかった視点が返ってくる.
そこから根本の問題が見えることがあります.

僕の感覚では,課題を見つけるときは人と話す.解決策を作るときは一人で考える.

この使い分けが速いです.

GoogleのEngineering Manager職でも,単なる目の前の作業管理ではなく,曖昧な問題を解き,技術的な方向性やロードマップを作り,チーム全体の優先順位を決める責任が置かれています.

ぶっちゃけタイム開始です.

不具合が起きるたびに毎回深夜まで原因調査して,「いやー,今回も大変だった」って言ってる人.

それ,毎回燃えてる家にバケツで水かけてるだけじゃない?

水かけるのは必要です.でも,そろそろ火事が起きない家を作ろうよ.

あと,一人で抱えて「忙しい忙しい」と言い続けるのもやめた方がいい.

愚痴でもいいから人に話せ.

一人の脳みそなんて大したことないです.僕のも含めて.

3-4.正しさを保ちながら敵を作らない力

技術的に相手が間違っていたら,間違っていると言います.ここを曖昧にする必要はありません.

ただ,「それ間違ってますよ」と真正面から殴る必要もない.

「ここは誤解しやすいポイントなんですが」
「僕も最初は同じ理解だったんですが」
みたいな枕詞はいくらでも使えます.

重要なのは,自分が正しいことを証明することではなく,組織を正しい結論に持っていくことです.

技術職で出世する人は,ここがうまいです.
謙虚で,悪者を作らない.でも必要なことは言う.論理で道筋を作り,最後は熱意で人を動かす.

英国政府の科学・工学リーダーシップでも,エビデンスに基づいて上位者へ建設的に異議を唱えることと,協働的な解決策を作ることがセットで扱われています.

ぶっちゃけタイム開始です.

技術的に優秀で,でも人を見下して,自分の意見を絶対に曲げなくて,言ってることは正しい人.

いますよね.

クソめんどくさいです.

本人は,「周りのレベルが低い」と思っているかもしれません.

周囲は,「能力は高いけど一緒に仕事したくない」と思っています.

この差はかなり大きいです.

4.出世する人と,優秀なのに出世しない人の違い

出世する人が全員,同じタイプというわけではありません.

技術力が圧倒的で,「この人が言うならやろう」と思わせる人もいる.相談しやすくて,「この人なら助けてあげたい」と思わせる人もいる.説明がうまくて,短時間で周囲を納得させる人もいる.

共通しているのは,何らかの形で人を動かしていることです.

逆に,優秀なのに上へ行かない人は,能力が自分の中で閉じていることが多い.頑固.プライドが高い.人を見下す.自分の正しさばかり考える.相手にどう伝えるか,相手をどう支えるか,どう動いてもらうかという発想が薄い.

個人プレイヤーとしては強い.

でも,その人にもっと多くの人を任せたいかと言われると話が変わる.

ぶっちゃけタイム開始です.

「周りが無能だから仕事が進まない」これを口癖にしている人は,かなり危ないと思っています.
仮に本当に周り全員が自分より技術的に弱かったとしても,その人たちを使って仕事を進めるのが上の仕事です.

自分だけができることを誇るだけなら,優秀なプレイヤーで終わります.

5.上司に好かれれば出世できるのか

もちろん,上司に好かれることは重要です.

でも僕は,上司だから特別に重要というわけではないと思っています.

上司も他人の一人です.
後輩にも,同僚にも,他部署にも好かれた方がいい.
上司には嫌われているけど,周囲から圧倒的に信頼されている人なら,それだけで終わるとは限りません.

逆に,上司にだけ気に入られていて,後輩から嫌われ,他部署からも「あの人とは仕事したくない」と思われている人を,本当に大きな組織の上に置きたいでしょうか.

出世は,上司攻略ゲームではなく,人間関係の総合点に近いと思っています.

ぶっちゃけタイム開始です.

「結局,出世って上司へのゴマすりでしょ」と言う人もいます.

ゴマすりだけで何十人,何百人という人間を動かせるなら,ある意味すごい才能だと思います.
でも普通はそんなに甘くない.
上司一人を攻略したところで,他部署から嫌われていたら仕事は止まります.

6.出世に必要な能力は,時間とともに変わる

若手の頃は,まず自分で仕事ができればいいです.そして,ある程度できるようになったら人に教えられるようになる.
中堅になると,教えるだけでは足りません.人を育て,導くことが必要になる.管理職候補になると,さらに道を示し,決め,チームを盛り上げなければならない.

つまり,役職が上がるほど,

「自分が成果を出す力」から「他人が成果を出せる状態を作る力」へ

評価の重心が移っていきます.

技術が不要になるわけではありません.技術が土台になるんです.

7.カリスマ性には「伝わるまでの時間」がある

これは完全に僕の経験則ですが,人から「この人すごい」と認識される能力には,即効性の差があると思っています.

僕の感覚では,

説明力 > 決断 > 人柄 > 実績・技術

の順です.

もちろん,重要度の順ではありません.

伝わる速さの順です.

初めて会った人の技術力なんて,普通は分かりません.実績も知らない.人柄も数分では分からない.決断力だって,一緒に仕事をしないと見えない.

でも説明力だけは数分で見えます.
「この人,話分かりやすいな」
これだけで最初の印象はかなり変わる.

その後,一緒に仕事をして「ちゃんと決める人だ」と分かる.もっと長く付き合って人柄が見える.最後に,「あれ,この人って実は技術的にもめちゃくちゃすごいんだ」と実績が効いてくる.

Googleの技術系管理職でも,深い専門性だけでなく,複雑な組織でステークホルダーへ影響し,明確にコミュニケーションする能力が求められています.

ぶっちゃけタイム開始です.

「説明は苦手ですけど,技術は分かってます」

周りからすると,知らんがな.なんですよ.
技術力がないと言ってるわけじゃないです.

でも,まだあなたのことを知らない人にとって,伝わっていない実力はその場では存在していないのと同じです.

だから人前で話す機会は逃げない方がいい.

会議でも,発表でも,他部署への説明でもいい.説明力は,出世を考えるならかなり即効性の高い投資だと思います.

8.出世には運もある

ここまでいろいろ書きましたが,出世には普通に運もあります.

ポストが空いているか.自分より優秀な人がいるか.どの部署に配属されたか.どんな案件を任されたか.タイミングは良かったか.

自分ではどうにもならないことはかなり多いです.

でも,僕は運ってチャンスを掴み取る力まで含むと思っています.

ただでさえ少ないチャンスが来たときに,「あの人を上げよう」と名前が出る状態になっているか.そこは準備できます.

実績を作る.人から信頼される.説明できる.必要なときに決められる.運が来るかは選べない.運が来たときに拾われる人になることはできる.

9.出世したくない技術者は,それでいい

ここまで出世の話をしておいてなんですが,

出世したくない技術者は,出世しなくても全然いいと思っています.

むしろ良い決断になることもある.

出世に必要な能力と,技術者として尖るための能力はかなり違います.マネジメントに興味がない人が,そのために技術へ使う時間を削るのはもったいない.

自分が本当にやりたい技術の道があるなら,そちらを選べばいいです.

ただし,時間軸だけは考えた方がいい.

今は管理職に興味がなくても,家族構成が変わるかもしれない.収入を増やしたくなるかもしれない.将来,肩書きが必要になる仕事をしたくなるかもしれない.

さらに,実力はあるのに長期間出世していないことで,周囲から実力以上に低く見られる可能性もあります.それが積み重なって,

「俺は本当は優秀なのに,会社が評価しない」

となると,そこから頑固者が誕生することもある.

だから,

今出世したくないことと,一生出世しないと決めることは別.

選択肢は残しておいた方がいいと思っています.

10.技術職で出世したいなら,能力ごとにこう鍛える

10-1.技術力・実績|口より手を動かす

まず成果を作る.

論文でも,特許でも,難題解決でも,希少スキルでもいい.

「あの人はこれができる」

を作ること.

10-2.人を動かす力|相手の立場ではなく,相手の価値観で考える

相手が何を嫌い,何を好きで,何を面倒だと思い,何に反応するのかを日頃から見る.

その人の琴線を探す.人を動かす練習は,そこから始まります.

10-3.根本課題を見つける力|課題ほど人と話す

困ったら人に話す.

愚痴でもいい.

一人では見えなかった問題が,他人との会話で見えてくることがあります.

課題は人と探す.解決策は一人で詰める.

10-4.正しさを保ちながら敵を作らない力|驕らない

自分を新人だと思う.周囲を天才だと思う.

そして,上司や出世している人にアドバイスを求める.

聞いたら一回その通りにやってみる.

「でも自分の場合は」と言うのは,やったあとでいいです.

最後のぶっちゃけタイム開始です.

結局,技術職で出世するために一番邪魔になるのは,

「自分は優秀なのに,周りが分かってくれない」

という気持ちかもしれません.

技術があるのは素晴らしい.

でも,会社で仕事をする以上,一人で完結しません.

技術だけがすべてでもない.人間関係だけがすべてでもない.

その両方を使って,自分より優秀な人たちにどう動いてもらうか.

たぶん,上に行くほど仕事はそこに変わっていくんだと思います.

まとめ|評価は過去,出世は未来を見る

最後に一番言いたかったことをまとめます.

評価は,その人が過去に何をやったかを見る.
出世は,その人に未来で何を任せられるかを見る.

技術力は必要です.

でも,技術力を自分の中に閉じ込めたままでは,上に行くほど限界が出てくる.

人を動かす.根本課題を見つける.正しいことを敵を作らずに通す.そして,何より驕らない.

僕が見てきた中で出世する技術者は,自分の能力を他人と組織につなげられる人でした.

技術職だからこそ,技術だけでは終わらない.

以上,ご清聴ありがとうございました.